【書評】戦略がすべて　著者：滝本哲史

事を始める際、誰しも「どうせやるなら成功し、成果を上げたい」。
ほとんどの人が、そう考えるのではないでしょうか？。

では、どうしたら成功し、成果を上げられるのでしょうか？

この本では、それを方程式と表現しています。
この方程式とは、私の解釈では「成功戦略」を意味していると考えています。
つまり、「成功＝戦略」。
成功する為には、成功する戦略（成功する方程式）を作る事が鍵を握るという事です。
＊大変申し訳ありませんが、この方程式「成功＝戦略」は、私がこの本を読んだ解釈で作った「創式」です。
自分が説明する上で、分かり易くなると思い、この表現をしています。例文で説明すると、

本文Ⅰー1項：コケるリスクを排除するーＡＫＢの方程式　→上記等式では：ＡＫＢ48の成功＝コケるリスクを排除する戦略を取る。
という感じです。

この本が書かれた背景には、本書の中で取り上げられている第二次大戦前後の日本軍を研究した「失敗の本質、日本軍の組織論的研究」があると、私は思います。
そこで問題視されているのは、「日本には戦略がない」という事です。
日本軍が初期に成功を収めたのに最終的に失敗する事になったのは、戦況の変化に対応した戦略を立てられなかった思考の硬直性にある。
一方アメリカは、当初の失敗から学んで、航空戦力・兵站重視の戦略を立て戦争の勝利を手にしました。
そして、アメリカのGAFAが世界を席巻している現状を見ると、残念ながら、日本の戦略下手は戦後70年以上たった今の日本にも継承され、改善されていないことを認識します。

驚異的な早さで現代は変化をし続けている。
だからこそ、変化に即応し、既成概念や古いやり方を破壊する新たな戦略を打ち立てて行かないと、豊かな未来がない事を国も個人も自覚すべきなのでしょう。
私には、その意味で、この本は著者の日本の未来に対する憂国の書と感じました。
日本人よ！もっと変わる為に戦略的になれ！…と。

あくまでも私の個人的印象ですが、今回のコロナ問題にも日本の戦略不足があると感じています。
それは、ワクチン確保に関する戦略です。

TVを見た記憶ですが、ワクチン接種先進国のイギリスは、昨年の2月頃からコロナ問題の最終決め手はワクチンと捉え、ワクチン対策チームを結成し、ワクチンの選定と早期確保交渉を進め、早期接種を実現しました。
それに対し、日本は明らかに後れを取っています。

オリンピック開催が1年後に変更する事が決まった時点で、イギリス以上にワクチン早期接種戦略を立案し行動していれば、混乱せずにオリンピックを迎える事が出来たのではないかと推測します。
この様な戦略不足は、日本のあらゆる未来への国家戦略にも言える気がして、個人的には日本の未来がとても心配になります。

話を元に戻すと、「どうしたら成功し、成果を上げられるのでしょうか？」という問いへの回答は、この本の題名「戦略がすべて」が回答になります。
では、この本では、戦略の意味についてどう考えているのでしょうか？

著者は、この本の中で「戦略」について次の様に語っています。
「戦略を考えるというのは、今までの競争を全く違う視点で評価し、各人の強味・弱みを分析して、他の人とは全く違う努力の仕方やチップの張り方をする事なのだ。」
そういう意味でいうと、「戦略」は弱者の為のツールでもある。
同じ戦い方で正面衝突すれば、もともと強い物が勝つだろう。
だから弱者が勝つためには、戦い方のルール自体を変えたり、攻守を逆転したりして、大胆な転換を模索するしかない。

目まぐるしく変化する現代で生き残るには「戦略的体質」が、今以上に求められる時代。…とこの本を読みながら強く感じました。
強者に効率的に勝つ方法である「戦略」を身に付けたいと考える人は、「自分は弱者」と位置ずければ、身に付ける事に真剣になれるでしょう！

この本は、成功の方程式＝成功への実例を中心に書かれています。
理論を理解しても、実践が出来なければ学んだ事になりません。
理論と実践は別物と考えて、戦略の実例を多く見る事が戦略立案実践時の助けになると思います。
この本の多くのケーススタディから、「自分の課題に対する戦略立案のヒント」を多く掴んで欲しいと思います。

成功しているビジネスの裏には、成功への「戦略」がある。
ただ、「戦略」の立案能力を身に付ける事は簡単ではなく、多くの学びと経験の積み重ねが必要と思います。

でも、難しいという事は、他人が真似し難い希少価値な能力を持つ事でもあります。
学ぶ価値は、間違いなくあると思います。