【書評】「自衛隊メンタル教官が教える」心をリセットする技術 著者:下園壮太

自衛隊と言うと、あなたはどんなイメージを持っていますか?
私は、指揮命令系統に従って、命のやり取りをする覚悟を持ち「与えられたミッションを忠実に再現して行く」組織集団。
そういうイメージを持っていました。

でも、この本を読むと、どうも堅苦しい考えでは、危機に対応する任務を遂行しきれない様です。
何故かというと、災害支援などでは、準備していった事と現場で求められられ事が、食い違うのが日常茶飯事であり、任務の内容が現場の状況変化と共に時々刻々変わり、それに対応する事を求められるからという事です。

では、どういう対処の方法をするかと言うと、「目標を仮置きして、考え過ぎず、思い付いたらやってみて、結果を観察してそれで又考える」というサイクルを回すのだそうです。
要は、現場に合わせ「動きながら考える」事で、未知の状況に柔軟に対処するとの事です。

本題に入りますが、本書は考えが堂々巡りし結論が中々出し切れない「止める・止めない問題」をテーマにし、そこから抜け出す方ヒントを提示してくれています。
「止める・止めない問題」が扱う課題は、「止めたくなった仕事、パートナーなどとの壊れかけた関係」などへの対処問題です。
いずれも人生に大きな影響を与える課題で、その後の人生を大きく変えるので決断しにくい問題であり、考え過ぎて”うつ状態”になる人も出て来る、難しい問題の取り扱いとなります。

何故難しいかというと、まず人の悩みが、気持ちとして「現状のままでは嫌!」という感情からスタートしているからです。
「現状を変えたい」が狙いであり優先事項だから、心のバランス上「変わらない、変われない」は、受け入れがたい事となります。
でも、大人になると現在の状況(経験・家庭環境・経済・体力)が有り、且つ人を巻き込む事にもなるので、簡単には「変わる」という結論を出せません。
結果として、「今の関係を止めたい!でも止める決断が付かない」という状態のまま、それを引きずる事となり、崩れた心のアンバランスに苦しむ事となります。

この状態に陥った人への抜け出すヒントが、上記致しました自衛隊の危機における柔軟な対処術となります。
あくまでも私見ですが、1つの判断が命を左右する覚悟を持たねばならない、自衛隊という特殊な環境で生まれたその危機対処の考え方は、抜け出せない迷路から抜け出すヒントを与えてくれると感じています。

著者が言うその対処法とは、「7~3バランス」という戦術思考です。

人はピンチに陥ると、頭の働きが鈍り、単純かつ極端な選択肢で動いてしまう。
その極端な選択肢とは「作戦を止める(10)」、「作戦を続ける(0)」の二者択一のみが浮かんでしまいます。
どちらも極端なので、ピンチを乗り越えられる気がしない、逆にどちらも悲惨な展開がイメージされ、どちらも選択出来ない迷路にはまってしまう。

そこで、自衛隊がとる対処法が、「戦うか(0)、逃げるか(10)」でなく、第3案を考える事です。
第3案を考える事で、イチかバチかの選択を抜け出せ、思考が冷静に回り始める。
つまり、0~10の間にある選択肢2~9案の中間にあたる3~7案(自衛隊で言う遅滞作戦)で小さく行動し、行動の結果を観察・分析し、又次の行動する。
性急に結論を出すのでなく、小さく動く事で、停まることなく冷静に状況を観察・判断しながら動ける事となります。

動いてこそ活路が見えて来る。
動かないと、当然、物事は一歩も進展する事が無く、自分の置かれた状況は変わらない。
いや、悪化をたどる。
だから、「変われないのは、動かない自分が悪い」と自分を責め始めてしまいます。
そして、自分を責め続けると、負のスパイラルが回り、悩みの闇に落ちて行きます。

だから、中間案を小さく動かすことで事態を少しずつ前に進めると、少しでも前に進んでいる事で気持ちがスクム事なく不安が消え、次のステップへと思考が進み、決断もより的確な物になる。
つまり、ある意味時間稼ぎをしながら行動し事態を観察する事で、冷静な思考の下で適切な判断が出来る様になる。という事です。

話は変わりますが、今年に入り、美男・美女俳優二人の自殺が続きましたが、「何で、あんなに恵まれた人達が?」…と、理解に苦しみました。
でも、「一見幸せそうに見えても、負のスパイラルという思考の闇に落ちると、歯止めが利かなくなってしまうのかな?」
どんな人でも「思考の罠に掛かる危険性がある」と言えるのだと思います。

もし自衛隊の「7~3バランス」という思考の対処法を知っていたら、思考の罠から逃れる事が出来たのではないか?
自殺という最悪の選択をする前に、踏みとどまれたのではないだろうか?
ふと、そんな事を考えてしまいます。

今まさに、「止める・止めない問題」で苦しんでる人、又、自分にその傾向が有る事を自覚している人は、是非、一度この本を読んでみて下さい。
視野が広がる事は間違いないと思います。
是非、悩みから抜け出すヒントを拾い出して下さい。

まさに、一瞬先は闇。
そんな時に救くってくれるのは、
・多様な思考回路。
・鳥の目・虫の目・魚の目の様に多様な角度・視点から事態を覗き見る力。
・一人ダイバーシティの様に多様性を自分の中に育て持つ事。
そんな風に感じませんか?。

2021年7月11日記

本の明細
著書名:自衛隊メンタル教官が教える 心をリセットする技術
著者名:下園壮太
発行所:㈱青春出版社
第1刷発行日:2021年2月15日
定価:1040円+税

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です