【書評】働き方5.0 著者:落合陽一

この本を読むきっかけとなったのは、NHK2チャンネルの番組”ズームバック×オチアイ”を見たからです。

番組の内容は、「過去の人類の歴史を巨視して未来予測をする」というテーマの番組です。
興味を惹かれたのは、番組内でナレーターより繰り出される質問に、著者が的確に持論を語る姿に有りました。

何でこんなにも的確に答えられるのか?
回答出来る落合陽一とはどんな人物か?
その秘密を知りたいという好奇心から、本書を見付け読んで見ました。

この本は、2016年4月に出版された「これからの世界をつくる仲間たちへ」(小学館)をベースにして2020年6月に新書化された物です。
これから世界をリードすべき「若者たちへ贈る著者からのメッセージ」であり「啓蒙の書」と感じました。

著者が創り出した造語「デジタルネイチャー」がこの本のキーワードです。
「デジタルネイチャー」とは、人が作り出した「デジタル」という技術の世界が、「ネイチャー」という自然界と融合・親和する事で生まれた「新しい自然」の事。
若者にとって「デジタル」と「自然」は相容れない別世界の物・場所ではなく、「デジタルと自然が親和し融合した物・場所こそが、若者にとっての自然」である。
と捉える考え方です。

インターネット、AI、コンピューターの進化は、人とデジタルの関係、組織の在り方、労働における人の役割などを変えて行く。
今住んでいる世界が、その影響で急激に変化している事を知らねばならない。
その進化という急流の川は何処に流れて行くのか?
デジタル関連の進化がもたらす社会の変化を前提に未来を予測し、新しい物創りを考えなければいけない。

社会の変化を促す物の裏側にはデジタルの進化がある。
現代ではデジタルなしには、社会が成り立たない。
だから、「難しいからデジタルは機能が使えればそれで良い」でなくデジタルネイチャー成立の裏側も知り、上手くそれを利用出来る人材になって欲しい。
著者は、中々デジタル世界で存在感を発揮出来ない日本の若者たちに、そう言いたいのだと感じました。

著者は、哲学書を好んで読んできたとの事です。
多分、「それはどういう意味なの?、それは本当なの?、何でそうなったの?、どう解釈すればよいのか?」と自分に多くの問いを掛けて、その答えを導き出して来たのだろう。
と想像しています。

世の中の現象の裏側にも焦点を当てて考え、そこから見えて来る全体像の中から自分の道を探ってきたから、それが血となり肉となり、今の落合像として結実しているんだろうなと感じました。

この本は若者向けに書かれた本ですが、「その親たちも知るべき内容だ」と思っています。
デジタル化した現在は全ての人の現実でもあるのだから、それを知る事なしに起こる事象・事件を理解できないし、正しい選択も出来ない。
ですから、デジタルの現在と未来の予測を知る事は、若者を子供に持つ親にとっては特に「マスト」であり、その上の年齢の人にも「よりベターに近いマスト」の教養として理解を深めるべきテーマです。

デジタルの進化が社会をそして未来を変えて行く!
デジタルの持つそのポテンシャル、その威力と脅威をこの本は教えてくれます。
見慣れないカタカナ文字が沢山出て来ますが、辞書を紐解きながらでも「デジタルの教本」として読んで欲しい。
そう思いながら読了しました。

グローバル化した世界では、変化や進化の激しい分野が主戦場になります。
私は、デジタルの世界がその主戦場と思っています。
明日の日本を担う若者には、恐れる事なく、楽しみながら時代を変え得る事に、
チャレンジして欲しい。
そう願っています。

2021年5月30日記

本の明細
著書名:これからの世界をつくる仲間たちへ 働き方5.0
著者名:落合陽一
発行所:㈱小学館
第1刷発行日:2020年6月8日
定価:820円+税

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