【書評】マーケターのように生きろ:「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動 著者:井上大輔

この本によると、人の生き方には二つの生き方があるとの事です。

①一つは、メディアで活躍するような際立った「個」を持つ人の生き方で、見るからに個性的で、人を引き付ける魅力にあふれている。そして、常識や慣習に縛られず、常に我が道を行く豪胆さを持ち合わせ、「表現出来る自分」を持った人の生き方。

②もう一つは、際立った「個=表現できる自分」を持たない人の生き方で、才能がないと自覚していたり、一度は挑戦したがむなしく挫折した経験を持つ人達の生き方。

多くの人は、出来れば①のような生き方をしたいと考えているのではないでしょうか?
でも現実は、圧倒的に②の生き方をしている人が多いのではないかと、私は思っています。

そんな「②のような生き方にお悩みの方」には、この本は”もってこい”の本だと思います。

この本は、上記②の人達が、本の帯タイトルに書かれた『「何者でもない自分」が最強の武器になる生き方』を伝授してくれます。結論から言うと、その生き方が、本書のタイトル「マーケターのように生きる」という生き方です。

「多くの人を惹きつける才能」こそないが、どんな人にも特別な才能が有り、自分にしか埋められない、世界の欠けたピースは必ず存在する。

「自分の才能が何なのかが分からない」人でも、①の「自己表現」という呪縛を捨てて、「相手からスタートする」=「マーケターのように生きる」という生き方をする事で、ドラマチックには見えないが「人に求められ、人の役に立つ事」で輝く人になれる。…というのが著者の考えです。

*マーケターとは、マーケティング業務を手がける人たちを指します。尚、マーケティングとは、「人や社会が真に求めている価値ある商品・サービスを創造・提供する総合的な活動」を指します。(WEB記事:アトオシ参照)

では、「マーケターのように生きる」とは、どの様な生き方なのか?著者は次のように表現しています。

「マーケターのように生きる」とは、「人の期待に応えることを追求する」生き方のこと。】

もう少し具体的に言うと「常に自分ではなく相手からスタートし、相手(顧客)の求める所を深く理解し、それを提供する事で相手の役に立とうという考え方」と著者は表現しています。

「人の期待に応えること」が大切なのは、価値(期待)というものは自分が決めるものではなく、価値は元々その価値を受け取る相手の心の中にこそあり、相手が決める物だからです。ですから人への働きかけの狙いは「相手が求める価値を満足させる事=人の期待に応えること」という形になるのです。

つまり、「相手からスタートし、相手の期待の内容を理解し、その期待に応える物を供給する」事が、「マーケターのように生きる」人の行動の進め方となるのです。

この様なマーケター的生き方で人の期待に応えることで、人や職場から「求められる人」になる事が出来ます。そして、人に求められる事で、「人の役に立つ人」に成れ、結果として輝く自分を手に入れることが出来るという事になります。

①芸術家のように自分の個を表現する事で「求められる」人になる。
②マーケターのように人を理解し、その期待に応えることで「求められる」人になる。

二つの生き方は、一見「芸術家のような個の表現者と相手の期待に応えるマーケター」と表現・行動の形は違うけれど、行き着く先は「人に求められ、人の役に立つ」という同じ所に収束していきます。

尚、ここで言う「マーケター」についていうと、説明上「マーケター」と抽象的に”大くくり”していますが、人それぞれに役に立てる分野は違ってきます。つまり、人それぞれに「誰かに役に立てる自分だけの領域」があるという事です。

要は、自分だけが埋められる「世界に欠けたピース(求められるピース)」が必ずあるという事です。つまり、誰もが個性的で一人一人が特別な存在であり、自分だけが出来るやり方で、世界の欠けたピースを埋めるという存在に成れるという事です。

だから、やるべきことは、『自分には「際立った個」がない』なんて嘆くのではなく、「どの分野でどうすれば、人から求められ、人の役に立つ力量(スキル)を持つように成れるか?」の方向に力を注ぐべきなのだ。…という事です。

では、この「マーケターのように生きる」には、具体的にはどう進めれば良いのか?。当然、その疑問が湧いて来ると思います。そこからが、この本のメイン部分となります。

既に上記しましたように、「マーケターとは、マーケティング業務を手掛ける人」の事を言います。つまりマーケティングを武器として、人の期待に応えるという事になります。

著者は、マーケテイングについて以下の通り言っています。

『マーケティングとは「相手を理解し、その期待に応える」やり方を、世界中の企業が試行錯誤し続けた結果としての実践の知識』。すなわち、『マーケティングとは「相手を理解し、その期待に応える」為に行われた壮大な実証実験の結果として出来た「人類の英知の結晶」』と述べています。

要は、マーケティングとは「お客様を理解し、その期待に応える」そのやり方をとことん掘り下げた「実践の知識」という事です。そして「マーケターのように生きる」という事は、このマーケティング技術を駆使し「相手の期待に応える」成果を上げて行くという事なのです。

そして、この思想を具体的におし進める作業の方法が、この本のメインの説明となる「マーケティングの4ステップ」と言うプロセスで、以下の通りのステップで進めて行きます。

ステップ①:市場を定義する。
ステップ②:価値を定義する。
ステップ③:価値を作りだす。
ステップ④:価値を伝える。

このステップを簡単にまとめると、「①価値を提供する相手を決める。→②相手が求める価値を明らかにする。→③価値を具体的な商品・サービス・コンテンツに作り込む。→④実現した価値を、相手にしっかり伝え選んでもらう。」と言う内容になります。

この本で著者が伝えたい事は、マーケティングの本質・技術は、人生のあらゆる場面に応用出来るという事であり、マーケティング的考え方や価値観で生きる(=マーケターのように生きる)事が、結果的に自分を表現する事に繋がり、そして自分の個性を生かす事に繋がっていく。…という事を伝えたいのだ、と感じました。

以上が書評と成りますが、この生き方について「もっと知りたい!」と具体的内容に興味が湧いた方は、是非ともこの本を読んでみて下さい。自分には「才能がない」と嘆いている方には、自分を活かし、人の役に立つ為に大いに参考になる本だと思いました。

尚、私はこの書評を纏めながら、マーケティングはアメリカで生まれた物ですが、マーケティングの根本的な発想は、日本人には「なじみがある考え方」だな!と感じました。「何処が?」というと、既に上記しました『マーケターのように生きる=常に相手からスタートし、相手(顧客)を理解し、相手の期待に応えること』という考え方は、「日本の”おもてなし”文化」そのものではないか?と思えたのです。

日本にある「お客様は神様」という考えは、正に「常に相手からスタート」する事であり、「お客様に気持ちよく楽しんでもらいたい」という相手を思いやる”おもてなしの精神”は、すなわち、マーケターの「相手を理解し、相手の期待に応えること」そのものだ!と読み解ける、と感じました。

ですから、マーケティングって、「何となくわかり難い!(私はそう感じていました)」と”毛嫌いするのではなく、マーケティングの本質・技術を『”おもてなしの精神”を人生のあらゆる場面で生かし切る「道具」と位置付ける』ことで、マーケティングに「取り組みやすくなるのでは?」と感じました。

YouTube動画を見ると、「日本の”おもてなし文化”に癒される」外国人旅行者が多いと感じます。それって日本文化の強みだ!と感じます。

そういう強みが日本人には備わっているのだから、その強みをもっと生かせるマーケティング技術は、是非とも取り入れるべく研究するべき価値がある!…そう、思いながらこの本を読了致しました。

アジサイが咲き始めました。もう、梅雨の季節ですね。
私の季節感は、その時期に咲く花を交えたシーンが写真のように思い浮かび、季節を感じる事が多い気がします。
梅雨の時期のシーンで言えば、「アジサイが咲き誇る明月院の庭に”しとしと”振り続ける梅雨の雨」。
そんなシーンが写真のように、頭に思い浮かびます。
長く生きれば、それだけ多くの写真が、心の引き出しにしまわれて行くのかもしれませんね。

雨の日が多くなって来たので、つい、感傷にふけってしまいました。

前回の書評で、当分の間、記事の発行は”出来上がった所で発行させてもらう”ように変更させて頂くとご案内させて頂きました。
発行日に合わせて生活すると、手段が目的化して、どうしても追われるような生活を送る気がして、このような形に変更させて頂きました。

あまり自分を追い詰める生活をすると”人生を楽しめない”と思い、実験的にこのような形とさせて頂きました。
今年いっぱいは、このスタイルで行きたいと考えていますので、宜しくお願い致します。

2023年6月5日記

本の明細
著書名:マーケターのように生きろ
著者名:井上大輔
発行所:東洋経済新報社
第1刷発行日:2021年3月4日
定価:1600円+税

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