【書評】苦しかった時の話をしようか ビジネスマンの父がわが子の為に書き溜めた働くことの本質 著者:森岡毅

「林先生が驚く初耳学」の番組をたまたま見て、森岡さんの熱血授業に感銘を受けました。その内容が書かれた本があるとの事なので、早速購入し読んでみました。

読んだ感想から言えば、この本は、本書の没頭「はじめに」に書かれた、「編集者がこの原稿を初めて読んだ時に言った感想の言葉『就活に臨む世代、いや、キャリアに悩むすべての人に役立つ本質的な書籍』」。それに尽きる。…と思いました。

この本が書かれた背景は、著者が、就活が近くなった娘さんに「働く事の本質」について伝えたいことがあるが、会話の中では上手く伝えられずいつもケンカになって終わってしまうので、文章ならば伝える方も聞く方も冷静になれるだろうと思い、書き溜めてきたそうです。

本の意図としては、「子供たちが、自分の将来や仕事の事を考える際の考え方(フレームワーク)」=「子供たちがキャリアの判断に困った時に役に立つ『虎の巻』」を作ろう。…と思ったそうです。

番組を視聴する時にも感じた事ですが、この本の特徴は湧き上がる疑問に対する応答がしっかりと、又分かり易く準備されているところに有る。…と感じました。どんな事に行き詰まって悩むのか?それに対しどんな質問が寄せられるのか?、それにどういう答えを返せば納得してもらえるのか?、まるで、相手の気持ちを手の平に置き、想定される質問に対し、理解し易くかつ効果的である答えを用意する事で納得させれてしまう手法が感じられ、さすがマーケティングのプロが書いた本と感じさせてくれます。

この本に若い時に出会っていれば、常に先を見据えた生き方を設計出来「生きている瞬間を、もっと意味あるものに出来たのではないか?」その結果「私の人生も、もっと濃い物になっていたのではないか?」…と思わせてくれる本です。

やりたい事が分からず、悩む人は大勢いる。…と私は感じています。
「やりたい事が見つからないのは何故か?」という質問に、著者は以下のように答えています。

【「問題の本質は外にあるのでなく自分の内側にある(要は自分自身を知らない事が問題)」「見つからないのは自分の中に『軸(自分のキャリアにとって最も優先度が高い大事な事)』がないから」「自分の中に基準となる軸がなければ、やりたい事が生まれるはずも選べるはずもない」】と答えています。

上記を私なりに要約すると、まず自分はどういう人間か?特徴(強み)を知って自己を理解する。そして、その特徴(強み)を活かせるような自分のキャリアにとって重視するべき(価値観)「軸」を自分で決める。その上で、その「軸」の上に自分の特徴(強み、職能)を徹底的に伸ばせるキャリア戦略を設計する。…となります。

ホンダ自動車の創業者も「得手に帆あげて」と言ってますが、勝負は自分の得意な所(強み)でする。その為にまずは、自分の特徴・強みをどうやって見つけるかが大切となります。
その為に、この本には「自分の特徴・自分の強みを知る為の『職能の基礎能力を分類するT/C/Lメソッド』」が用意されています。

T/C/Lとは、「TThinnking=考える力、CCommunication=伝える力、LLeader ship=人を動かす力」の事ですが、この三種の「職能の基礎能力」ごとに向いている仕事があるとの事です。このメソッドで自分の特徴・強みを知り、その能力に紐づいた職能から、自分の取るべきキャリア戦略、自分の向かうべき仕事先も導き出す事が出来ます。

自分はどう進めば良いのだろう?どう選択すればよいのだろう?

人生には必ず何度かその岐路を問われる時が訪れると思います。
その岐路で、自分にとって正しい選択が取れるようになりたいものです。

その為にも、自分の特徴をしっかり掴み自己理解して、その上で自分の大切な価値観を見極め、迷いなく選択できるようになりたいものです。

読者の方が親で有って、職業選択を始める年頃のお子さんを持っているなら、早いうちにこの本を読ませることをおススメします。なるべく早い段階から、お子さんが、自分の人生は自分で設計しなければいけない事を知れば、普段の生活や人生への意識が変わり「自分の人生は自分で選択する」という自意識の高いお子さんへ変身するきっかけになると思います。

この本を親子で読み、未来を、キャリアを、設計する事を話し合う材料にもなると思います。

そして、年齢を問わず(高齢者でも)、自分のやっている事に疑問を感じ始めている方にも、この本は「自分の今をどう変えていくべきか」を考える指針になってくれると思います。

生活があまりにもルーティン化すると、大切な何かを置き去りにしている様な気になる事があります。
目標を持ち、それに向けて24時間の時間割をし、それを黙々とこなしていく。
目標に向かっているのだから、本来はそれで良しのはずなのだが、何か大切な感情が置き去りになっている様な気がする。
そんな時は「何でそんな気持ちになるのか?」…と少し戸惑いを覚えます。
考えると、最近は原稿を書く事で頭がいっぱいで、他の事を考える余裕をなくしているような気がします。
一人作業の時間が多いと、どうしても自分の感情が動く時間が無くなり、生活への手応えがなくなってしまいます。
それでも、結果が出れば良いけれど、上手く回っていないと、このままで良いのだろうかと不安に襲われます。
皆様はいかがですか?
仕事に追われ、過ごす時間に充実感を失っていませんか?
こんな時は、自分の感情が動く様、何かを変えなければいけないのでしょうね!
私は今の所、私の周りの人との会話を増やす事を、まず心がけてみたいと思っています。

2022年7月6日記

本の明細
著書名:苦しかった時の話をしようか ビジネスマンの父がわが子の為に書き溜めた働くことの本質 
著者名:森岡毅
発行所:ダイアモンド社
第1刷発行日:2019年4月10日
定価:1500円+税

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