【書評】日本人の為の世界最速思考マニュアル OODAループ思考[入門] 著者:入江仁之

OODA(ウーダ)ループ思考は、戦場で敵に先んじて確実に勝利するために生まれてきた理論です。

アメリカ空軍大佐のジョンボイド氏が提唱し、現在は「どんな状況下でも的確な判断・実行により確実に目的を達成できる一般理論」として、欧米で認められる様になったそうです。一瞬の判断と行動が生死を分ける戦場で勝つために生まれてきた理論ですから、速さを出す為の直観力を鍛える事を重視した実践的思考法、と私には感じられました。

この本を読了して感じたこと。それは、一見思考の技術の説明本に見えますが、実は、この本は日本の未来を憂う「憂国の書」だと思いました。

筆者の入江さんは、経営コンサルタントで、日米欧の組織のコンサルティングを通じ、日本人の根本的な問題は「個人の判断と行動のスピード(の遅さ)にある」と確信を持ったそうです。そして、その遅さの原因は日本人が持つ習慣的思考法から来ている。その考え方のクセについて、筆者は6つの例を挙げています。

[日本人の判断・行動の遅さを生む原因となる思考例]

過剰な同調圧力:他人と同調する事に重きを置く。
完璧主義:分析や計画が大好きで、石橋は叩き壊すためにあると考えている。
正解志向:他人からどの様に見られているか、気にしてばかりで自信が持てない。
先走りたくない、遅れたくもない:それでいて周囲が動き出すと、急に慌てて追随する。
思考停止:自分の目と頭で物事を捉えようとせず、紋切り型の受け止めで済ましてしまう。
知的怠惰:決めようとしない、動こうとしない、変わらない……。

筆者は、組織にOODAループを埋め込む支援をする中で、活気がなく、停滞感や閉塞感が漂う組織を幾つも見て来たそうです。この現状を変え、日本の組織を速く強くするには、経営陣から現場まで、一人一人の思考法が変わる事が必要と思ったそうです。
*上記した日本人の思考例を見ますと、私には、自主性が無く、深く考える事もなく、周囲に流され、事なかれ主義で自立出来ていない、そういう人物像が浮かんできます。

(変化に対応する為に)スピードと柔軟性が最優先される(VUCAの)時代には、それに合った思考法が必要とされる。でも今の日本人にはそれがない!。だから、(瞬時に判断し、直ぐ動ける技術である)OODAループを使いこなせる人を一人でも増やす為に、筆者はこの本を書く事にしたそうです。
 *VUCAとは、4つの要素(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)のため、将来の予測が困難な現代の状況を表す言葉です。

[ なぜ速さが必要なのでしょうか?]
 筆者は、速さこそが最大の成果を生む理由について、下記三つの項目を上げています。

①:速く動かなければ、選択肢がどんどん失われる。→グズグズすると他人に先を越され、採る選択肢が狭まる。
②:速く動かないと主導権を取れない。→速く動けば先手を打てるので、自分の土俵で戦える。
③:速く動いた分チャンスが増える。→たとえどんな素晴らしいアイデアでも、誰かが先に実現したら価値を失う。

現代は誰もが速さと新しさを競っており、変革のスピードが速い。そして新しい技術が生まれるとあっという間に市場を席巻してしまう。たとえ大企業で有れ、判断や行動の先送りが有ると誰かが先に実現し、市場を一気に奪われてしまう。

[OODAループ思考は何故判断・行動が速くなるのでしょう?]

この本を読了した今、速さの生まれる大きな理由は、思考・行動ステップのショートカットに秘密があると思いました。

・OODAループを回すステップには、「見る→分かる→決める→動く」の4ステップが有ります。通常で考えると状況への対処はこの4ステップを踏むので、速くなることは有りません。でもこのステップをショートカット出来れば(例:4ステップを2ステップへ)、それだけ速く判断し動く事が出来ます。

このショートカットの可否と種類を判断し選択する方法は、状況の難易度を4領域に分け、その状況の難易度に応じたショートカットの種類を決めておき、おかれた状況がどの領域かを判断し選択します。この4つの難易度領域設定は「横軸の状況の認識二項目(日常と非日常)」、「縦軸の行動の結果の予測の二項目(予測できると予測できない)」の縦・横の二軸のマトリックスで四つの領域を設定します。

・A領域:日常的かつ予測可能な状況=最速パターンで「分かる」→「動く」の2ステップ。
・B領域:非日常的だが予測可能な状況=「見る」→「分かる」→「見る」の3ステップ。
・C領域:日常的だが予測不能な状況=「分かる」→「決める」→「動く」の3ステップ。
・D領域:非日常的かつ予測不能な状況=「見る」→「分かる」→「決める」→「動く」の4ステップ。

ステップを省ける理由や、D領域をA領域へ近付けて行く詳しい方法については、この本を読む事をお薦め致します。

OODAループ思考は、日本でポピュラーなロジカル思考など違い、聞きなれない思考方法です。でも、日本人が苦手とする「判断と行動の高速化」を可能にしてくれる思考方法と感じました。
判断できない、動けないという悩みは、多くの人が抱えていると感じています。やや難解はで有りますが、読者の皆様が、この最速と考えられているOODAループ思考に触れる事で、前進する為のヒントを得られれば幸い…と期待しています。

ブログを始めてから早1年4カ月。
それにしては、筆の進みが一向に速くならないのが悩みです。
ただ、最低週1件の公開は続けたいと考えています。
そして、記事のクオリティが下がらない様にも頑張りたいと考えています。
2022年3月20日記

本の明細
著書名:日本人の為の世界最速思考マニュアル OODAループ思考[入門]
著者名:入江仁之
発行所:ダイヤモンド社
第1刷発行日:2019年9月18日
定価:1500円+税

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