【気になった情報】TV番組逆転人生に見る「組織改革を成功へ導く人材の育て方考察」そして、そこから学ぶ事
今回は、2月28日にNHK1chで放送された逆転人生「逆転の人事改革 会社を救った新リーダー」という番組からの編集記事です。
生きている限り、人生には必ず窮地に陥る事が有ります。その際、「どんな事を考えて?」そして「どんな行動で? 」乗り切り、逆転の成果を導き出したのか? 実例で示してくれるこの番組は、多くの示唆を与えてくれます。
語りの主役は、富山県にあるジェネリック医薬品を主に製造販売する「前田薬品工業」の二代目社長:前田大介さんです。
窮地に陥った問題は、製造薬品の期間有効成分の数値が規格を下回ったにも拘らず「薬品の試験データーの改ざん」をして出荷し、それが発覚してしまい、富山工場が10日間の業務停止という行政処分を受けてしまった事が始まりです。
その結果、取引先の信頼を失い、10億円をかけた新工場もそのスタッフと共に売却する事となったそうです。そして、責任問題で父親の前社長退任を受け、二代目社長となつた大介社長の打った人事対策も上手く機能せず、約100名の希望退職者を出してしまい、倒産寸前まで追い込まれたとの事です。
(1)原因を究明し組織改革に挑戦
1年かけ原因究明の結果、不祥事が起きた背景に、深刻な組織の問題がある事が浮かび上がって来ました。
・改ざんという不祥事が発生した経緯
改ざんが行われたのは、1年以上前で、その経緯は下記のとおりです。
「品質管理部の一担当者が、製造薬品に効能劣化の問題がある事を掴み、上司に報告をしたそうです。問題を解決すべく、品質管理部の責任者が製造部の責任者に製法の見直しを指示の所、(当時、事業拡大の為、納期の順守を会社は最優先しており、その影響もあり製造部の力が強まっていた背景があり)製造部からは、納期優先だから「見直しは出来ない」と言われてしまった。
そんな中、品質管理部の中間管理職が、(品質よりも)納期の遅れを恐れ、担当者に数字データーの改ざんを指示、上司が怖い担当者は、嫌がったが、結果としてデーターを改ざんをしてしまったのです。
・原因調査の結果、組織の問題は二つあった
①組織の縦割り構造:製造部と品質管理部の対立。
②年功序列:ベテラン社員が絶対で、若手は委縮している。
この二つが、データー改ざんの大きな要因になっていた。
*立教大学教授が、この点について下記のように説明しています。
「これは、日本の長期雇用習慣の負の側面。製造業は、物を作る為に熟練の職人とスキルが必要なので、ある意味この二点は合理的でもある。ただ、これが行き過ぎると年上がパワーを持って、年下が何も言えなくなる事が起き、ややこしい問題となる」。
*社長曰く(縦割り・年功序列の会社体制の下)コミュニケーションは最悪で、圧倒的権力を持った人の言う事をひたすら聞いてやる。という「若手が、思考停止している状態」で、何も言えなくて諦める人がいた。
(2)人事制度改革への挑戦
この難局を乗り切る為に大介社長は、実力主義に基づく「人事制度改革に挑戦」しました。
高校時代バスケット部のキャプテンとして、数字扱いが得意で始めたデーターバスケット(例:シュートの成功率等の数値化)で勝利に貢献した経験、そして前に勤めた会計事務所で学んだ数字に基づく経営、の経験を生かすことを考えた。そして、数値に基づき評価する実力主義という人事制度改革を始めた。
狙いは、年齢・男女を問わず実力ある人が上に立ち引っ張る会社になると、確実に良いリーダーの下、コミュニケーションの深い納得のあるプラスのスパイラルが生まれるだろう。…と考えたのです。
・人事評価の概要
従来は、技術力に優れたベテラン社員が出世し易い仕組みだったが、より多くの指標で社員を評価する事にした。
・評価項目は、三項目で、①:ノウハウのマニュアル化、②コンプライアンスの順守、③:業務の効率化。
・評価計算は、各項目の掛け算:難易度数値×達成度で出た数値の合算で出す。
Aさん:①難易度×達成度=40×0.8=32、②20×0.8=16、③40×0.6=24、合計評価72点
Bさん:①難易度×達成度=20×1.0=20、②20×1.0=20、③60×0.8=48、合計評価88点
Cさん:①難易度×達成度=20×1.0=20、②40×0.6=24、③40×0.6=24、合計評価68点
結果として、Bさん(30代の若手社員)がベテラン社員を追い抜き、管理職に抜擢された。
この人事改革と並行して不祥事の元となった納期の問題にも取り組んだ。
(3)組織の縦割りの打破と納期優先の打破の為に事業と組織を見直す
不祥事の起きた背景の要因に対し下記二つの対策を講じた。
・現場が納期に追われない様、大胆に事業を縮小。他社との競合が激しい薬品からは撤退し、製造する品目を絞り込んだ。
・部門長の固定化を止め、定期的に部門のトップを入れ替えるジョブローテーションを採り入れた。
これで、会社は立ち直れると大介社長は信じて始めたが、新たな人事評価で抜擢した管理職に、思いもよらない問題があった事が判明した。その問題とは、新管理者は能力が高い故に部下への要求も高く、高圧的な上司になってしまった事です。
更に、組織の縦割りを打破しようと採り入れた、管理職の定期的部署移動のジョブローテーションにも問題が発生した。新しい部署を担当する事となつた管理職が、知識不足で適切な指示が出せず、現場が混乱に陥ってしまったのだ。
こうして、抜擢した管理職とベテラン社員の間にも軋轢が生まれ、一部のベテラン社員は昔のやり方に固執し、新たな上司の指示に従わなかった。
(4)大介社長が新たに打ち出した対策:社長自ら社員全員との対話で問題を洗い出す。
困った社長は、服装を柔らかいものに変え、全社員150人から1人30~60分、1人×2回、会社をどう変えたらよいかを聞く事にしたそうです。中々本音を言わない社員に、本音を語ってもらうまで粘り強く聞き出したそうです。
その結果、生き詰まった人事改革を好転させる意外なヒントが浮かび上がってきたのです。
それは、社長が「隣りの班で話し易い方はいらっしゃいますか?」の質問に対する答えで、桑名さんは、すごく話し易い、桑名さんだったら寄り添ってくれそうです。という事を聞かされたことです。まさか、桑名さんの名前が浮かび上がって来るとは、社長は思ってもいなかったそうです。
桑名さんとは、前記した人事評価が最低だったCさんです。桑名さんは入社10年の二人の子を育てるママさん社員で、社長から見ると、控えめな性格でリーダーシップがあると思えなかったそうです。でも、候補ではなかったが、社員の言葉を信じ、桑名さんを品質管理部の責任者に大抜擢した所、すると驚くべき変化が起きたそうです。
桑名さんは、部下を育てるのが抜群に上手だったそうです。一人一人の個性を見極め、それに合った細やかな指導を行い、「例:試薬を取り違えたメンバーに、色分けををススメ、取違いを防止する方法を考えさせた」その結果、品質管理部でのミスが7割削減でき、作業効率が劇的に向上した。桑名さんは目立たなかったが、部下から母の様に慕われるリーダーになっていた。
・この結果を見て社長が感じた事
「リーダーシップが”どうこう”とか、論理的思考やプレゼン力が”どう”とかより、それ以上に、人間としての奥深さとか、懐の深さとか、ああいう人がリーダーに立つと言う事は一つの方向に上手くまとまる要素なんだな!…とストンと腹落ちして、彼女をリーダーにしようと思った瞬間に世界が変わったポイントだった。」
(5)人事評価を一新した
上記を機に、新たに周囲との関係性や人間性を見る「情意評価」を設定し、従来評価合計に加えた合算で評価する様に人事評価内容をかえたそうです。
前述したA,B,Cさんの評価の情意評価を加えた人事評価点合計は、Aさん=72+10=82点、Bさん=88+5=93点、C(桑名)さん=68+30=98点となり、桑名さんが最上位となりました。
この人事評価改革の効果は上がり、次々と部下の能力を引き出す管理職が誕生し、彼らの下でチームは活き活きと輝き始めたそうです。尚、組織的にも管理職の負担を軽減させる為に、新たにリーダークラスという役職を設定、様々な権限を委譲した結果、管理職に頼らずとも社員たちが自主的に行動できるようになり、混乱に陥っていたジョブローテーションも上手く機能する様になったそうです。
(6)一連の改革による成果
・現場をよく知る社員の自主的なアイディアで業務は一気に効率化
社員たちの改善提案は、その数何と998件に上ったとの事です。
*社長談:皆さんに意見を聞く事は、実は自分が何かを考えるより、よっぽど制度が高く、そして皆さんが納得感を持って、最もスピード感を持って改革出来るというのが良く分かった。
・大手製薬会社の製造委託先として、ライバル5社との競合の中、20億のビックビジネスの提携を勝ち取った
*社長談:提携の為に提携先より、品質管理・生産ラインの効率性・技術力の厳しい審査があったが、社長は自信があったそうです。何故ならば、先ほど述べた、998件に上る改善、製造機器のメンテナンス、薬剤の整理の仕方、工場の景観に至るまで、日々改善を重ねて来たから。
そして、見事チャンスを掴みとりました。不祥事から8年かけて勝ち取ったV字回復劇となりました。
(7)私が学びたい事
1、真似出来る所は、真似する事。
色々な失敗を重ね、成功を勝ち取ったこの成功劇は、会社の一つの成功モデルとして考える事が出来ます。この逆転劇で見えて来る会社運営及び組織の管理職のあるべき姿を、理想のモデルとして真似したいと考えています。
問題というのは、あるべき理想と現実のギャップ(差)という事です。理想モデルがあると、問題が明確となり、思考と行動を前に進め易く成ります。
確かに失敗の経験は、貴重な財産となりますが、学びを一から始めるのでは、あまりにも学ぶのが遅くなります。他人の経験を無駄にせず、理想モデルを真似る事で、いち早く習得し、従来方式より一歩先に行き易くする。それが、更なる進化を図る秘訣と考えています。
2、管理職として必要と思える共感できる力、「情意意識」を育て、準備する
自分が管理職をやった際に、部下の能力を上手く伸ばすことが出来なかったという反省の想いが有ります。こういう成功モデルを知らなかった事、学んでこなかった事が大きな原因と考えています。この物語には、管理職が持つべき人間力のモデルが提示されています。とても学ぶべき事と感じました。でも、その力を得るには長い時間が必要となります。だからこそ、この管理職のイメージ像を理想の形として目指し、学びの時間短縮に生かすべきと考えます。
この人を育てる為に持つべき情意意識は、管理職だけでなく、父親像としても(部下=子供と考え)同じく応用が可能と考えます。応用力のあるこの情意意識モデルは、無駄にするには惜しいモデルと評価しています。
ただ、このモデルは、女性の基本思考能力である共感を生かした寄り添う力を生かしていると思うので、話掛けられる雰囲気を作り、自主的な問い掛けを誘うスタイルが必要かと思います。特に話ベタの男性は、雑談力を付けて、開かれたコミュニケーションの場を演出する事が必要なのかなと思われました。
幾つになっても、なかなか人は成長するのは難しい。
でも理想像が描ければ、そこを目指し進むことが可能となります。
そして、その情報は、この物語の様にTVで沢山放映されています。
その意味で、「成長は求める人の気持ち次第なのかな!」と感じています。
堀江貴文さんの言う様に、TVも含め多種のメディアに、情報を狩りに行きましょう!
2022年3月6日記