【書評】家族のトリセツ 著者:黒川伊保子

あなたは、子供を甘やかす方ですか?それとも厳しく接する方ですか?
あなたは、奥さんとの話し初めに「今日は何してた?」から入る時が有りますか?

・子供には、どちらかというと厳しく接する方かも。
・奥さんには、けっこう「今日は何してた?」から話し始めているかも。

…とこころ当たりのある方は、この本を読む事をお勧めします。なぜなら

1、笑顔のない家庭の子は頑張れない。

上段について言えば、筆者は「プロゴルファー伊藤桂子さん」との会話での言葉を引用し、こう述べています。
・筆者:「どんな子がトッププロになっていくの?」
・伊藤さん:「誰にでもチャンスはある。でもこういう親の子だけは一流になれないという親はいる」
・筆者:「それってどんな親?」
・伊藤さん:「それは、結果にコミットしすぎる親。親が結果に一喜一憂すると、子供は失敗を恐れる様になる。親は、子供以上にがっかりしたり、有頂天になってはいけないの」

黒川さん曰く、『長い間生きていると、つくづく思う事がある。「センスがすべて」。人生はその一言に尽きる。』。そして「失敗させないAI(人工知能~黒川さんの専門分野)は、このセンスが悪い」のだそうです。
~人口知能に学習させるとき、あえて失敗させて回路のショックを与える様にすると、しばし”混乱”して学習時間が長くなるが、新事業への対応力が格段に上がるそうです。

「大切なのは成果でなくセンス」。センスのいい脳であれば思いもよらない新事象に、「確信」を持ち迷いなく答えがだせる。そして、その「確信」を得るには、失敗を重ねないといけない。つまり、失敗は恐れるのでなく、むしろ歓迎するべきこと。つまり、大人は子供の失敗に寄り添って甘やかせれば、家庭は優しい場所になる。

2、家族の対話は基本「問題解決の対話」でなく、「心の対話」で始めるのがセオリー

黒川さん曰く「いきなりの5W1H系の質問は対話クラッシャー」なのだそうです。
「今日は何してた?」は、質問を受ける側としては、相手の行動を問い質すかのように聞こえてしまうようです。まるで、楽していたんじゃないの?と疑っている様な。

問題は、日本の家族の対話は「問題点や欠点の指摘」といった「問題解決型」に偏っていること。本来必要なのは「心の対話」で、それは「共感」で進められなければいけない。そして「心の対話」は、「相手の事を尋ねる」のではなく「こちらの話」から始める。「自分が感じた事」「自分に起こった事」をちょっと話す。するとそれが「話の呼び水」となって相手の言葉があふれだす。それを楽しむのがコミュニケーションで、まずは「あなたの気持ちはよくわかる」と感情を受け止めてから対話を始める事が不可欠です。…と。

「問題解決」で会話は終わりと考えがちな男性には、耳が痛い指摘です。でも、著者が言うように、家族との対話の第一ミッションは「家族に安心感を与える事」という主張は、「確かに!」と思えます。コミュニケーションは、「相手を理解する、自分を理解してもらう、という共同作業」と考えるならば、まずは相手を安心させる「心の対話=相手への共感」から始めるのは、基本的に必要なこと、と腑に落ちます。

家族は最も深く、長く関係を持つ人達であり喜びの源泉でもあると考えれば、人生という航海において、家庭が唯一心を休める場として機能するように作り上げる努力は続けたい、と私は考えます。

黒川さんは、一連の「トリセツ」シリーズで、家族との係り合い方を指南してくれています。妻又は夫、娘や息子と上手く会話が出来ずに悩んでいる方には、是非とも読んで欲しい本です。ちなみに私は、この本以外にも「妻のトリセツ」「夫のトリセツ」を読んでおり、家族への理解が進んだことを実感しています。
この書評の最後に黒川さんが、家族に対する心構えを述べた言葉を下記いたします。

*家族は、叱咤激励するよりも、甘やかした方が強くなる。それは絶対!
こころの糸が切れる前に「サボってもいいんだよ」「失敗は人生の貯金だから、恐れなくていい。もし耐えられなく成ったら、ここに戻ればいい。世界中からあなたを守ってあげるから」と言ってあげよう。家族はそう在りたい。

参考までに、
黒川さんは、人工知能とヒトのインターフェイスを研究して37年。㈱感性リサーチ代表取締役社長さんです。

女性が会話の基本としているのは共感。
なかなか、共感から始められる男性は少ないのではないか?と思います。
男性は、女性からの相談に解決案を提示し、終わり。…になりがちです。
でもどうやらそれは間違いで、本当は慰めを求めている様です。
女性は、相談しながらも答えは自分で分かっている。
でも、あふれ出す感情を自分で制御できない。
だから”分かる、分かる”と共感して貰うことで、自分を慰めたい。
そういうことだと思います。
自分は男性だから、本当の所は残念ながら分かりません。
でも「そうしよう」と心掛けています。
奥様とは「いつも感情がすれ違ってしまう」と感じている男性は、一度奥様を抱きしめながら「分かる、分かる」と慰めてみたらどうでしょうか?
少なくとも試す価値はあると思います。

2021年11月21日記

本の明細
著書名:家族のトリセツ
著者名:黒川伊保子
発行所:NHK出版
第1刷発行日:2020年10月10日
定価:850円+税


Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です