【書評】人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるのか 著者:岡田尊司

心理学は何の役に立つのか?
心理学を学ぶ価値を感じるには「この問いに答えられてこそ!」…と皆様も感じているのではないかと思います。

そこで、私にとって「心理学に対し何を期待するのか?」を考えてみました。
ちなみに、NET(資格のキャリカレより抜粋)を調べてみると、心理学とは下記の内容で記述されています。
【心理学は、ある事象に対する人の心や行動の反応の仕方を科学的な手法で研究する学問】
この『「人の心や行動の反応の仕方」は=人間の心理』と解くことができ、心理学は=「人間の心理を研究する学問」と解釈できます。

では「人間の心理」を知る事は、私達にとってどんなメリットがあるのでしょう?
このメリットが見えてくれば、「心理学へ期待出来ること」も見えて来ます。

このメリットを考える為に、私の最近の気になるテーマの一つ「コミュニケーション力を付けるには何が必要か?」を事例にし、考えてみます。
このテーマの答えを望む理由は、人間の多くの悩みはコミュニケーション不良による「人間関係の悩み」の比重が重く、「人間関係を円滑にすることなしに快適な生活は送れない」と感じているからです。本テーマに対する私の現在の回答は、以下の通りです。

『そもそもテーマの目的である「人間関係を深め、円滑にするため」には何が必要なのか?、私は「コミュニケーションを通じ相互理解を深めること」が重要と考えています。何故かというと「対面する相手がどんな環境でどんな事情を抱えているのか?」それをお互いが理解してこそ、相互に相手の立場や感情に共感でき、その気持ちに沿った建設的話し合いが可能になるからです。その結果お互いの利益になるWIN-WINな解決策を見つけだせ、快適な人間関係を作り出せる。』

要は、お互いが相互理解を深めてこそお互いが抱える問題が明確となり、有効な利害調整の話し合いが可能になる。その結果として快適な人間関係が出来上がる。つまり、人間関係を深めるには相互理解が必要で、コミュニケーションは相互理解を深める道具と位置付けて取り組むことが必要ということです。

そこで、相互理解を深める上でのポイントを上記文章より読み解くと、上記の文章の「相手の立場や感情に共感でき」だと読みとれます。
「相手の立場や感情に共感」できる=「相手が置かれている情報を下に、相手の心理を読み取る」ことが出来る、からこそ共感できる。それは、あいての心理を知ることなしに、人間関係を良好にする言葉の選択や行動が出来ないことを意味します。
つまり、共感は「相手の心理を読み取り、気持ちを共有する」から出来ることなのです。

こう人間の心理を紐解いて考えて来ると、「人間の心理を知ること=心理学」のメリットや「心理学へ期待出来ること」は、「人間の相互理解を深める」道具として有用である。というより相互理解の必須アイテムということになります。

心理学を学ぶメリット、有用性を更に深掘りして考えてみましょう。

「人間の心理を知ること」は、人間の感情の動きを説明出来るということでも有ります。説明出来るということは、何らかの人間関係のトラブルが発生した時に、原因を把握出来るということです。そして、原因をつかめれば人間関係のトラブルに対し効果的な対処ができます。
又、人間の心理を知り感情の動きを説明できれば、自分の心理の動きも把握でき、その延長線上に自己心理のコントロールも視野に入ってきます。

さすがに、ここまでくると「言うは易し、行うは難し」と突っこみが入りそうですが、人間の心理を知ることで、少なくとも悪い結果を生む考え・行動に対する反省は出来ます。反省を継続できれば、そういうシチュエーションに入ることを避ける知恵も湧いてくるので、少しずつ心理のコントロール出来る巾がおおきく成ります。

「人間心理を理解してこそ効果的コミュニケーションが成り立つ」。
そしてそれは「対面する相手の心理だけを理解するだけでなく、伝えようとする自分の心理をも理解する」事で成り立つ。つまり心理学は快適な人間関係を作り出す為に、表面には見えない人間の心理を紐解く事から始まったと推測できます。

本題に入りたいと思います。この人間アレルギーの本を読むことで、何が理解でき何が説明出来る様になるのでしょう?
それは「人を嫌いになる人間心理の本質と構造」を理解し説明出来るようになることです。

著者は「人間アレルギー」のことを下記の通り定義しています。
【人間の人間に対する過剰な異物認識と心理的な拒絶反応ーそれを私は「人間アレルギー」と呼ぶ。】

体のアレルギーは、免疫異常で排除する必要のない物まで異物と認識し攻撃することで発症します。人間のアレルギーも同様、排除する必要のない他者を受け入れがたい異物とみなし、心理的・行動的な拒絶や攻撃によって排除ようとする状態に陥る。そして、この人間アレルギーは多様な精神疾患症状(適応障害、社会不安障害など)にからんでいる。

もし、あなたが自分に近い人を嫌いになり、お悩みであればぜひ本書を読んでみて下さい。
原因を知ってこそ、対策が立案できます。
ただ、”あの人は嫌い”という感情は、原因がわかっても簡単に変えられるものではないでしょう。
でも、嫌いな人がどうして生まれるのか?その人間アレルギーが生まれる心理メカニズムを知り、自分の心理状態を説明できる様に成れば、悩みを押さえる救いの一条の光となると思われます。

最後に、今回はかなり観念的文章に成り過ぎたかなと感じています。
次回以降の書評作成には、「もっと分かり易く」を意識して行こうと反省しています。
懲りずに、宜しくお願い致します。

嫌いな人がいると、生活は息苦しく、暗転します。
それが、生活の主な舞台である職場の仲間や親子・兄弟のような近親者であると尚更です。
でも、ただ嘆いているだけでは、改善することは有りません。
常に”あがくべき”と、私は言いたいです。

原因は誤解であったり、単なる自分の思い込みであったり、ボタンの掛け違いであったりします。
コミュニケーションを図る少しの勇気さえあれば、事態が燃えあがることは無くなるでしょう。
発生した問題への対応は、早さと速さが肝心です。
「曲解が曲解を生み、収拾不能になる前に摘み取ることが大事!」だと経験から言えます。
そして、早さは思わぬ感動を呼び、絆を生むことも見て来ました。

それは、一歩を踏み出す勇気さえだせば、誰にも出来る事です。
ただ、すでに修復不能のケースもあると思います。
”逃げ恥”の様に、一旦関係を解消する事も選択としてありえます。
良く見極めて決断すべき時は果断に行いましょう。
*念のため、”逃げ恥”とはTVドラマの題名「逃げるのは恥だが役に立つ」の略です。

2021年11月14日記

本の明細
著書名:人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるのか
著者名:岡田尊司
発行所:㈱新潮社
第1刷発行日:2015年6月20日
定価:1300円+税

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