【書評】問題発見力を鍛える VUCAの時代は、解く力よりも問題を見付ける力!著者:細谷功

著者曰く、急激な変化により不確実性が増加するVUCAの時代で求められる力は「問題解決力より問題発見力」との事です。
*VUCAの時代=(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代。

旧来の組織では「問題は上司(上)から与えられる物」というのが、一般常識だったと思いますが、不確実性が上がれば上がる程、与えられた問題自体に過誤が出る可能性が高まるので、「そもそもこれは解くべき問題なのか?」と、問題その物を疑い、問い直し、真の問題を再発見し「解くべき問題はこちらではないですか?」と逆提案をする能力が求められるようになって来たようです。

確かに、私の長年の職場経験からも、旧来の組織では「上意下達」が一般的なやり方なので、ほとんどの人は受けの姿勢で有り、「与えられた問題に回答を出すこと(=問題解決)」は出来ても、「自ら問題を発見し、提案する事が出来る人」は、極く少数派だったと思います。

現代はデジタル化、IoT化、グローバル化などで、急激な変化が当たり前の変革の時代。当然「状況が変化すれば、問題自体が変わってしまう」という、各段に難しい時代です。だから、この時代に求められる人材は、人任せでなく自ら主体的に問題を探しに行く姿勢を持ち、それにより問題の正否を的確に見極められる力を持つ事が、求められているのだと思います。

この時代の組織人は「仕事の指示待ち族」では生き残れない。変化に対し「自ら事態を評価し、自ら真の問題を発見する」、そういう「積極的・能動的姿勢」を持ち仕事に取り組める人材こそが、この変革の時代に適応できる。そして、その思考転換ができない人は、時代に取り残されていってしまう。…という事なのだと思います。

では実際の所、この「問題を発見できる人と発見出来ない人」を分けている要因は、何なんでしょうか?
この本を読みながら、ふとそんな疑問が湧いてきました。

そこで、この疑問の答えを思考の結果、「”自分から問題を見付けに行くという思考習慣”を持っているか?否か?が、”問題を発見できるか否か”を分ける、仕分けの分岐点」という「仮説」が導き出されました。

この本の主題は「問題発見力を鍛える」という事ですが、この「鍛える」という主旨は、もともと「”自分から問題を見付けに行く”という思考習慣」はあるが、まだ「問題を発見する力自体は未熟な人」に向けて言う言葉と思うので、この思考習慣を元々持たない人であったなら、「無い物を、鍛える事は出来ない」ということになると思います。

つまり『「問題発見」という角度でテーマに迫る「思考習慣」そのものがない』から、問題発見が出来ない。だから、問題はこの思考習慣の有無にこそ有る。…という事です。

疑問の正体は、『この本の趣旨である「問題発見力を鍛える」という所に進む前に、まずは「問題を発見しようとする思考習慣を持つ」という所から始める必要があるのではないか?そこをしっかり見つめてから、この本を読むべきではないか?』という気付きから生じた物でした。

「問題発見力は積極的かつ能動的な姿勢の土台の上に立つ言葉」だ。…と私は捉えています。ですから、「指示待ち」の様に受動的な姿勢では、問題を発見することは出来ないでしょう。自ら問題を刈り取る、主体的、自立的な「攻めの姿勢」を持ってこそ、VUCAの混沌の中から「問題を抽出=問題発見」ができるのだと思います。

「問題を発見する思考習慣を持ってない」と心当たりのある人は、まず、その部分を見直す事を考えてみて下さい。

*今回も少し回り道をしてしまいましたが、「問題発見」という思考習慣を持つ人は、実は少ないのではないか?、そして、その習慣を持つ事は重要な課題なのではないか?そう思えたので、先に取り上げさせて頂きました。

では、この問題を発見する思考習慣はどうしたら身に付ける事が出来るのでしょうか?拙い経験を辿り考えてみました。

私も長いサラリーマン時代に、問題を発見し、改善を行った事があります。
内容的には「こんな仕事はその都度計算するのでなくパソコンで応用ソフトを作り、自動計算させるべきだ!」という「イラ立ち感情→問題発見」が有り、その当時、世に出たばかりのウインドウズのパソコンを勉強しながら問題を解消する自動計算ソフトを作り、軌道に乗せた。…という成功体験です。

その時の経験とその後の思考を混ぜ合わせ、私の中では「問題発見→改善の提案」がどう生まれて来たのか?、気持ちを整理して考えてみました。

①その中で大切に思ったのが、自分の中に芽生えた不満や疑問に対し「目をつぶらない」事です。出来れば、その問題を「言語化し、紙に書き見える化」する習慣を持つ事が第一のコツだと思います。

問題を感じながらも、それを放置するといつの間にか諦めたり忘れたりして、何も変える事が出来ません。気付いたその時に言語化しメモに残す事で、問題意識が育ち、思考習慣を作り出してくれます。とても大事な習慣だと思っています。

そして、この思考習慣は、心の状態が大切で、他人任せではなく、”自分で何とかする”と考える「主体的かつ自立の心」という能動性が有ってこそ身に付いていくもの。…と感じています。

「問題を発見」が出来るのは、この「積極的に主体性を持って事象を見つめる(=観察する)」事でこそ、隠れている問題が浮かび上がり、問題の発見に繋がっていく物。…と私は考えています。

まずは、湧き上がった感情を問題意識に昇華する事が入口だと思います。
そして、その問題意識が生まれるには”心を動かされるキッカケ”があると思っています。”キッカケ”は大きなところで下記の二つがあり、この”キッカケ”で生まれた「気付きや感情」を実現への原動力として生かす事が出来れば、「問題意識を持つ→問題を発見する」習慣が身に付いていくものと考えています。

(1)現状への”不満や不足”などネガティヴな感情(負の感情)を感じた事をキッカケとして、現状を「何とかしたい!」と問題意識が生まれてきます。
(2)外部情報(テレビ・雑誌・SNS・本など)を見て、「こうしたい!こうなりたい!」と感情が刺激された事がキッカケとなり、「憧れや夢などに近づきたい!では何をすれば良いのか?」と問題意識が芽生えます。

この二つの刺激で問題意識が芽生えると、同時に「理想やあるべき姿」のイメージが膨らんできます。そして、その明確化してきたイメージが「在るべき姿と現状のギャップ」を際立たせ、その間にある「問題」を明確化してくれます。

上記致しました①と②を実践しながら、二つのキッカケを活かし、「問題を発見する思考習慣」を育てることを考えてみて下さい。尚、この一連の流れを体験し、現実に成功させ、成功体験を持ってこそ、その価値に目覚め「成功サイクル」として体感・習慣化されて行きます。何としても一度は成功体験を味わうまで頑張りましょう!

*書評というより、この本を読む事で考えさせられた事をメインに書いてしまいました。
でもこの本を読む事で、「BUCAの時代で生き残るには、思考その物をBUCA仕様に変えなければいけない」という事を感じさせられました。

そして、今の日本人には、時代を切り開く「問題発見力」という視点が欠けているのではないか?という事も考えさせられました。この本から、「問題発見力」が足りない日本人は、深刻なピンチ状態ではないのか?という杞憂も感じました。でも物は考え様で、ピンチこそが自分の現状を洗い出してくれ、未来へ向けすべき道を描き出す手助けとなってくれます。

いつでも”ピンチは千載一遇の変身のチャンス”です。

本当の所、「問題発見力」は、今までも大切だったのだと思います。そしてこの「問題発見力」の衰えが、日本の国力をジワジワと落とさせる主因だったのではないかと感じています。

目まぐるしい変革が襲ってくる現代だからこそ、今まで以上に未知の荒野を切り開く「問題発見力」という武器を必要としているのだな!…そんな風にこの本を読みながら考えました。

「問題発見」とはどういうことなのか?という事が、この本を読むと見えて来ます。やや、抽象的な概念を扱っているので、(私には)理解しにくい所が有りましたが、今の時代の嵐を切り裂いて前に進む為には、「問題発見力が決め手になる」と感じさせて頂きました。

現状を何とか変えたい!でも、どうアプローチすべきかが見えて来ない!、と方法論にお悩みの方には、是非、参考として読んで欲しい一冊です。

暖かい日が多くなり、残念ながら関東地方では梅が散った所が多い様です!
ただ、木ごとに咲くリズムがそれぞれで、まだ満開の所もあるようです。

梅が咲くと、春が近いと実感します。
ただ、梅は寒い時期に咲く事も有り、桜に比べどうしても華やかさに掛けると感じています。

でも個人的には、桜の華やかさと違い”可愛さ”がある所に魅力を感じています。
そして、私に見える梅の花は、とても日本人の女性的な花とも感じさせられています。

というのは、梅の花は「私の美しさを見て!」的な自己主張を感じさせること無く、むしろ、内に秘めた可愛さや美しさがにじみ出てくる感じが有り、とても奥ゆかしさを感じさせる素敵な花だと感じています。

でもこの感想は、少し古い人間の感想かも知れません。
若い女性からは「かってな自分の想いを押し付けないで!」と叱られるかもしれませんね!

2023年3月10日記

本の明細
著書名:問題発見力を鍛える  
著者名:細谷功
発行所:㈱講談社
第1刷発行日:2020年8月20日
定価:900円+税

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