【書評】直観を磨く・深く考える七つの技法 著者:田坂広志
「深く考える」という事は、こんなにも奥が深いものなのか!
それが、この本を読み終えて、私が感じた事です。
「考える」技術というと、一般的にロジカルシンキング(論理的に考える=論理思考)を思い浮かべるのではないでしょうか?でもこの本によると、『「論理的に考える」とは、「考える」という技法においては、実は初級課程に他ならない』。考えるという意味では、まだ、入口に過ぎなく、『深く考えるには、「7つの思考法」をマスターする必要がある』との事です。
どうもこの世の中の構図は、思う以上に色々な要素が絡み合い複雑化し、単純な視点では見えて来ないようです。そして、その複雑さを読み解くには、深く考える技術の習得が必要になる。そして、構図が見えていない所で行う判断は、大切なことを見逃してしまい、誤った判断を招いてしまうという事を示唆しています。
つまり、深く考えられない事は”リスク”と考えられます。
【「考えが浅い」と言われる人の七つの場面】
上司や経験豊富な人から「考えが浅い」と指摘される場面は7つ有り、以下の様に7種類の言葉で、指摘されるそうです。
その語られる指摘の言葉は、以下の通りです。
①「確かに、理屈ではそうだけれども…」
②「そう簡単に白黒つけられないだろう…」
③「それだけが問題ではないだろう…」
④「それは、視野が狭い物の見方だな…」
⑤「まあ、本にはそう書いてあるけどね…」
⑥「もっと、相手の立場になってかんがえられないのか…」
⑦「何か、勘が悪いんだな…」
皆様は、こんな指摘を、年長者や上司などから受けた事が有りませんか?
こんな指摘を受けると、”何が、相手にそう感じさせたのだろう?自分の中の何が足りないのだろう?どう対処すれば良いのだろう?”…と、指摘の意味をとらえきれず、思わず気持ち的に「ウッ!」と、煮詰まってしまいますよね!
こういう指摘の意味を理解し生かす為には、たぶん多くの経験や失敗を重ね、成長する事が必要なのだと思います。ただそこに至るまでに必要とされる長い道のりを考えると、暗たんとした気持ちになってしまいます。
でも、安心して下さい。実はこの7つの指摘に対処するには、それぞれに対応した「7つの思考法」が有るのだそうです。そしてそれが、本書で解説される深く考える技法「7つの思考法」です。その概要は下記の通りです。…上記7つの指摘に対応しています。
①直線論理だけで考えない。→「循環論理」の思考法。
②二項対立構造で考えない。→「対立止揚」の思考法。
③個別問題だけを考えない。→「課題回帰」の思考法。
④狭い視野の中で考えない。→「水平知性」の思考法。
⑤文献知識だけで考えない。→「体験知性」の思考法。
⑥自己視点だけで考えない。→「多重人格」の思考法。
⑦直観の力を用いて考える。→「自己対話」の思考法。
問題というものは、例えば「人間心理、置かれた環境、過去の経緯」など、人が考えるより多くの複雑な要因を抱えて、発生する場合が多いと思います。ですから、問題を解決するには、多くの視点を持っていないと、視野狭窄に陥り迷路にはまってしまう事や、的外れの対策を立ててしまう事も多く発生すると思います。
そんな時、問題に対し色々な角度・視点で深く考えられる上記思考法を知っていれば、より「正しい解」に進む事が出来ると考えます。
その意味で、この深い思考の技術に触れておくことを、おススメしたいと考えます。一度読んでおけば、必ずや次なる成長を促すタネとなってくれると思います。
そして、この書評でもう一つ触れたい事は、「直観力」の磨き方についてです。実は、この本を買って読んだのは、この「直観を磨く」という題名に魅かれた為です。矛盾を含んだ問題を、一気に解決に導いてしまう「直観」。是非とも手にしたい力と憧れます。
私も長い人生を送って来たので、この「直観」とも思える事を体験してきています。ただ、その体験のほとんどは、悩んで苦しんで考えている結果、訪れるケースでした。
「もっと直観力を身に付けたい!」…私が、諦めつつも望んでいる力の一つです。
ただそれは、本の題名「直観を磨く」から連想できるように、簡単な事ではないようです。著者は、この直観力について以下の様に言っております。
【実際の知的営みにおける「直観力」とは、様々な技法を用いて思考力全体を高めていったとき、始めて磨き出されて来るもの。】
著者が言うに、「直観」というのは、天才達がしばしば言う『アイデアは「自分が生み出した」というより「何処かから降りてきた」』という印象だそうです。
この「アイデアが降りてくる」事に関しては、著者は量子力学からくる仮説『「量子真空」の中のエネルギーの溢れた場「ゼロ・ポイント・フィールド」に繋がれる「賢明なもう一人の自分」が介在してもたらされる。…という仮説を前提としてイメージしている様です。
そして、著者は、この「賢明なもう一人の自分」は、どうすれば現れるのか?、どうすれば会話できるのか?について、それぞれ『「もう一人の自分が現れる7つの身体的技法」と「対話できる7つの技法」』を提唱しています。
・「どんな人にも、自分の中には天才がいる」事に気付く事!
・自分の中の天才を引き出せないのは、「自分はそれほど才能に恵まれていない」と思う「自己限定」にある!
と著者が言っております。
「直観力」を欲しいと願う人がこの本を読む事で、「賢明なもう一人の自分」と出会える力を得ることが出来たなら!…そんなことを思いながらこの本を閉じました。
1年が経つのは早いもので、もう10月も終わろうとしています。
今年も、あと2か月強で終わってしまいます!
皆様は、今年の目標の達成はできそうですか?
私は、”トホホ”と泣きが入る状態です。
目標どころか、昨年より実績が上がらない状況なのです。
年齢には勝てない!”しょうがない”…と自分の年齢を言い訳にして、少し自分を甘やかしてしまった様です。
何を言ってもいい訳になってしまいますが、あえて原因を考えてみました。
思い当たるのは、コロナ下における「遊び」の自己制限でした。
少し気分的には緩くなって来ていますが、「遊ぶ」のはもう少し我慢した方が良くない?と囁く、もう一人の自分がいます。
守りが堅い?勇気がない?
どちらの理由かは分かりませんが、どこかに出掛けて気分転換をしようとする自分を、押し留める自分がいます。
いずれにしろ、仕事ばかりで適度な遊びが出来ていない現状が、心のバランスを崩す原因になっている気がしています。
やはり心のバランスは大事ですよね!
出掛けるには、季節が寒くなって来てしまいましたが、そろそろ「遊びの解禁」をしてみよう!と考えています。
2022年10月26日記
本の明細
著書名:直観を磨く 深く考える七つの技法
著者名:田坂広志
発行所:㈱講談社
第1刷発行日:2020年2月20日
定価:900円+税