【書評】0ベース思考 どんな難問もシンプルに解決できる 著者:スティーブン・レヴィット、スティーブン・ダブナー
ゼロベース思考?
必要だ!…と分っているようで、使いこなせていない思考のノウハウ。
私は、ゼロベース思考にそういう印象をもっています。
何故、ゼロベース思考を使えないのだろう?…と素朴な疑問が浮かびますが、どうも簡単にはいかないようです。
この本の筆者は、この問題に一つの(下記)示唆を与えてくれています。
「現実には、問題を解決するのは難しい。何かの問題が今もあるという事は、今までも大勢の人が解決出来なかったって事だろう。簡単な問題は消えてなくなる。いつまでも残っているのは、難しい問題なのだ。それに、小さな問題一つとっても、きちんと答えを出すには、適切なデータを突き止め、整理して分析するのにかなりの時間が掛かるものだ。」
なるほど!確かに!…ユニークな視点からの切込みですね。
「身の周りの問題ならば、ヒントさえもらえれば大体解決できる」と安易に考えていたら解決できないのかもしれない。悩みや問題には、心して、真剣に向き合わないといけないんだ。…と、この文章はそういう示唆を与えてくれます。
でも私的には、解決できないという事は、解決する切り口が自分の中にないから解決出来ない。…と考えています。
その場合ならば、どうすればよいのでしょう?
この問題への筆者の答え(下記)が、この本を書くこととなった動機のようです。
『個別の質問に答える本を書いて、(問題は全て難しいから)むざむざ失敗するくらいなら「フリーク=常識の枠に収まらない人、既存の慣習に囚われない人」みたいな考え方が出来るようになる。って本を書いた方がいいんじゃないかと僕たちは考えた。』。
こういう経緯で、この本は書かれたようです。
問題は全て難しさを含んでいる。だから、思考が偏りがちな人間という存在は、問題の原点に立ち戻り、白紙の状態から考える事が必要だ!それが「ゼロベース思考」。…という事ですね。
「人間は、思考の偏り(バイアス)まみれ!」…というより、「思考の偏りを持ったのが人間」といった方が正しい。そういう印象を私は、人間に対し最近感じています。正しいと思っている自分の景色(価値観)が、他の人の立場に立つと、まるで違った景色(価値観)に見えてくる。
もっと噛み砕いて言えば、例えば、奥さんが友達と喧嘩をして泣いていたとします。では、奥さんはそんな自分に対し、旦那さんに対しどうして欲しいと考えていると、あなたは思いますか?…以前の私であれば、その喧嘩の理由を聞いて、その対処法をアドバイスをしようとすると思います。でも、どうもそれは間違いで、本当は悲しんで泣いてる自分に共感して、慰めて欲しいと思っている。…らしいです。
この価値観の違いを、トリセツシリーズ本を書いた黒川伊保子さんが、説明しています。
「男女の価値観が、そもそも違うのでこの行き違いが起きる。男はゴール指向問題解決型の価値観を持ち、女はプロセス指向共感型の価値観を持つ」と言ってます。つまり、奥さんはアドバイスなんて求めてない!ただこの悲しい気持ちをどうにかして欲しいと!と泣いている。だから正解は、抱きしめて慰める事なのです。
良かれと思ってしている事が的外れで、返って旦那は何もわかってくれないという絶望感に繋がり男女の亀裂を生んでしまう。
つまり、人間の正義や価値観そして考えは、人数分違ったものがあると考えた方が良いようです。
ですから、自分の価値観や経験から出来ている視点や視座が変わらない事には、行き詰まった問題の解が見えてこない。…と考えねばなりません。
そこで、白紙の状態に立ち「本来どうあるべきか?」から考えるゼロベース思考が必要になるのだ。…と私は解釈しています。
でも、そうだとしても、どんな偏りを持っているのかを知る事がまず必要になると思います。それを教えてくれるのが、この本の役目。そう感じました。
この本は、物語を通して色々な偏りや価値観が有ることを教えてくれます。
物語を中心に書いた理由を次のように著者は説明しています。例えば「モーセの十戒」という戒律を言える人は、アメリカ成人の14%しかいない。でも聖書の物語「イブがアダムに禁断のリンゴ食べさせた話など」は苦労せず誰もが思い出せます。物語のこの強さが欲しかったようです。
説明書きを主とした思考本より、はるかに面白い本です。でも、この物語が、どう「ゼロベース思考に結び付くのか」がみえにくいという感想も持ちました。
読み終えてこの物語形式には賛否両論があるだろうなと思いましたが、このユニークな「問い」に含まれる視点には、一度読む価値がある。…とも思いました。
ゼロベース思考は、是非とも身に着けたい問題解決の思考法と私は考えています。その入門の書として、「一度は読んでみた方が良い本」と私は感じました。もう少し、深く思考ができるようになったら、どんな世界を感じれるのか?もう一度読んでみたいと思っています。
適度な曇り具合で、太陽がきれいに見えたので、思わずパチリとカメラに収めました。
散歩は日課にしていますが、ほぼ、四時ごろの出発なので、夕暮れ時の写真が中心となります。
今週は残念ながら雨模様なので、シャッターチャンスは少ない気がします。
実の所、本当は写真よりも絵を描きたいのですが、絵の才能はまるで皆無なので写真で我慢しています。
でも、何であれ、創作するのは楽しい作業です。
ただ、自己満足で終わるのは寂しいので、出来るだけクオリティを上げたいと考えています。
見守って頂けたら幸いです。
2022年5月9日記
本の明細
著書名:0ベース思考 どんな難問もシンプルに解決できる
著者名:スティーブン・レヴィット、スティーブン・ダブナー
発行所:ダイアモンド社
第1刷発行日:2015年2月13日
定価:1600円+税