【書評】アサーション入門 自分も相手も大切にする自己表現法 著者:平木典子
自分の持つ考え方一つで、相手は敵にも味方にもなる!
自分が持つ思考形態が、人生の損得を創り出す!
この本を読んでいると、そのような感想が湧いてきます。
今回は、聞きなれない英語「アサーション」入門書に関する書評です。
アサーションの内容を覚えやすいように簡略的に言うと、「自他尊重の自己表現」という言葉になります。
(私も聞いた事がありませんでしたが)アサーションという言葉を知らない人には、聞き慣れない英語だけに少し概念がつかみにくく感じます。でも人とのコミュニケーションに自信がない人には、とても有効な考え方と感じました。
コミュニケーションが不得意な人は、話相手の事を考えない自己中心的で極端な下記①②のどちらかの表現を取ってしまいがちです。
①臆したり、遠慮する事で自分よりも他者を優先し、自分は後回しにしてしまう。…非主張的自己表現という。…弱い立場の人に多く見受けられる。
②自分の事だけをまず考えて行動し、時には他者を踏みにじってしまう。…攻撃的自己表現という。…強い立場の人に多く見受けられる。
こういう一方的自己表現の下では、当然お互いの理解は進まず、つながる事が出来なくなります。
つながらなければ、(お互いの理解が有ってこそ成り立つ)協力関係が生まれる事は有りません。
アサーションは、この①②のバランスを考え、「自分の事をまず考えるが、他者の事にも配慮する」自己表現法です。つまり、一方的でなく双方向の対話を前提とする事で、相手も自己も大切にすることを可能とした自己表現法です。
自分を生かすことが前提だけど、相手が生かされてこそ自分も生きる。その考え方で人に接するからこそ、
・お互いの協力関係を作れる。
・お互いの良い人間関係が出来る。
・お互い同士が自分の味方になってくれる。
のです。
「人の悩みは全て人間関係」と心理学者のアドラーが言っています。
たとえば妻と夫の間で、あるいは親と子供の間で、そして会社の上司や部下との間で、うまく通じ合えないことに悩んでいる人が多くいると思います。
こういった身近な人との人間関係が崩れると、近い関係だからこそ余計に悩みが深くなります。
良い人間関係を作る事は、誰しも悩みを抱えていると思います。
それ故に、どんな人間関係を持てるかで生きるのが楽にもなり苦にもなります。
「身近に分かり合える人」がいると快適な生活を送れ、「身近に分かり合えない人」がいると一気に落ち着かない生活に変身してしまいます。
良い人間関係作りは、自分を生かす為、そして所属する共同体を生かす為にも、欠かせない必要条件と捉えなければいけないのです。
では、良い人間関係はどうすれば出来るのでしょうか?
この本に出会い、「アサーションはその一つの答えである。」…という感触を感じました。
「アサーション」=自分も相手も大切にする自己表現の事です。
これは相手にどう伝えるか?、「”伝え方”が大切だ」ということであると私は解釈しています。
伝え方を支えているのは、考え方です。
だからこそアサーションという概念を理解し使いこなすことが出来れば、良い「伝え方」が出来、そして敵対や我慢のない「共生可能な人間関係」を作れる。
この本は、入門書です。先は長いのかも知れません。
でも、この本を通じアサーションの概念をつかみ実践出来れば、自分も相手も相互に尊重するやり取りをして、さわやかな人間関係を作ることが出来る。
そう、感じています。
人と人が理解し合うのは、むずかしい。
それは、家族でもむずかしい。
というよりあまりにも近い家族だからこそ、思い込みが生まれ擦れ違がってしまいがちです。
でも相手が誰であれ、理解する事なしに人間関係は作り上げられない!
だからこそ、人間を研究し、相手を観察し、理解しようとする事が大事。
そういう努力は、必ずや相手に伝わり深いつながりを作っていく。
正しい努力は裏切らない!
そう信じて進んで行こう。…と自分に言い聞かせてます。
2021年10月17日記
本の明細
著書名:アサーション入門 自分も相手も大切にする自己表現法
著者名:平木典子
発行所:㈱講談社
第1刷発行日:2012年2月20日
定価:820円+税