【書評】佐藤可士和のクリエイティブシンキング 著者:佐藤可士和

佐藤可士和氏を知っていますか?と質問すると、「ユニクロのロゴマークをデザインしたアートディレクターでしょ」。
そう答える事が出来る人が、結構いるのではないでしょうか?

著者の佐藤可士和氏は、「アートディレクターの仕事とはどういう仕事か?」という事を世に広めた人、と言っても過言ではないと思います。
一般的にデザインというと、「表面を美しく飾り立てる」の様に単なる表層的な部分価値として捉えてしまいますが、佐藤可士和氏のデザインは、会社のフィロソフィやビジョンという本質的価値を取り込んでデザインされ、それがデザインに説得力を与える事に成功しています。

著者は、この本の中でアートディレクターの仕事を次のように語っています。
「クライアントの言葉にならない熱い思いを引出し、社会に伝えていく為の的確な方法を見付け出し、具現化していく仕事。いわばコミュニケーションコンサルタントともいえる」。
又、比喩的表現として
「クライアントの課題をカウンセリングを通して見つけ出し、それに対する処方をデザインという手法で行うコミュニケーションドクターのような仕事」。
とも言ってます。

少し意外ですよね!
デザインの仕事というと、あくまでもデザイン中心の創造的仕事で、コミュニケーションコンサルタント?、コミュニケーションドクター?と言われても少し違和感を感じますよね。
でも本を読むとコミュニケーションを重視する意味が分かってきます。

クライアントは、どう表現すれば良いのか?という悩みを抱え仕事を依頼して来ますが、実はその答えはクライアントの中にしかない。
それ故に、クライアントからその答えを引出す為に、クライアントとのコミュニケーションがもっとも重要な仕事となる。
この顧客の中にある答えを見付けてこそ、メッセージ性が有り個性的なデザインが出来る。…そういう事だと思います。

著者は、デザインをする前にクライアントと面談を重ねるそうです。
独自性のあるデザインが出来ているのは、顧客とのコミュニケーションを通じ依頼先の会社の本質・根幹を見極め、それをデザインに加味しているからだろうと感じます。

でも、そのコミュニケーションとクリエイティブシンキングにはどんな関係があるの?と聞きたいですよね!
その点について著者はこの本で「滑らかなコミュニケーションというのは、人間関係の基本であると同時に、それ自体が非常にクリエイティブな行為なのです」と言っております。

仕事は人が動かしている物だから、良質なコミュニケーションで、お互いが考えを理解し合い問題を明確にし、目指すビジョンを共有する事が最も大事になる。
そして、そのコミュニケーションを支えるのが、クリエイティブシンキング(創造的な考え方で、問題を解決していく事)であり、その思考法を作り上げた過程で育てたクリエイティブマインドにある。
そう読み取りました。

話は変わりますが、実はこの本はだいぶ以前に購入したが、未読で本棚に置いたままにしていた本です。
私は、この所思考法に興味が有り、思考関連の本を読んでおり、その流れの中で未読であったこの本を読んでみました。

本を読んだ感想としては、やはり「結果を残す人は、経験を血と肉に変えて作り上げたしっかりした思考法を持っている」という印象を持ちました。
逆を言えば、しっかりした思考法をもっているからこそ、世に知られるデザイン成果を上げられているのだとも思いました。

デザインとは、ビジョンという抽象をデザインという具象にする実践的かつ創造的行為だと思います。
でも、その実践を良質にするには、それを可能にする思考法とそれを実践するマインドを持つ事が必要とされる。

抽象を具象化する行為は、形を生み出す為に必要条件で有り、且つ最も難しい行為と私は考えています。
そしてザイン的視点は、効果的な物を生み出す為に誰しもが持つべき視点と私は感じています。
この本には、そのデザイン的視点を育てる実践的ノウハウを含めた沢山の知見が詰まっています。

思考法を採り入れる事は、決して簡単な事ではないと思いますが、デザイン的思考を知る事は決して無駄にはならないと思います。
一読をお勧め致します。

色々な思考本を読んでいると「頭の中の悩みは言語化する」
など同じ事を言ってるケースに遭遇します。
こういう共通する思考は原則的に取り入れ、生かしていこう
と考えています。

2021年6月7日記

本の明細
著書名:佐藤可士和のクリエイティブシンキング
著者名:佐藤可士和
発行所:日本経済新聞出版社
第1刷発行日:2010年6月25日
定価:1500円+税

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