【書評】「無敵」のマインドセット　著者：ジョー・ボアラー

私は、常に良くなりたい！、だから行動したい！と考えて来たけれど、何故か結果として行動せずに終わってしまう！。
…と想いを実現できない悩みを抱え、溜息を付いている人が、多くいるのではないかと思います。

実は、「行動にストップを掛けているのは、自分自身の心の中に原因がある」！。
それは無意識の内に自分に制限を作り出してしまう力で、それを「心のブレーキ」と言う。

最初にこの言葉に出会うと、「それってどういう事？」。
今まで、自分が自分にストップを掛けた事なんて記憶にないし！、「本当にそんな事があるの？」

そう反論しつつも、確かに行動せずに終わってしまう事が多い。…と心当たりのある方。
そういう“あなた”にこそ、この本を読んでほしいと思います。

なぜそういう事態に陥るのかと言えば、原因は心の中に植え付けられた「思い込み」にある。

それは、「脳力は、個人が遺伝で受けたギフト（資質）で有る」という考えから作られる「思い込み」です。
本書では、「固定された思考」＝『「人の能力は変えられない」という思い込み』と表現されています。

つまり目の前にある課題に対し、チャレンジする前に無意識化で「私には分不相応」と判断され、自分は検討対象から外されてしまう。
結果として、自分は成長する機会を自ら放棄する事になってしまう。
そしてその考えは、長く教育の場や仕事の場でそれが「当たり前の社会通念」、と語られると同時に教えられて来た固定観念です。

だから難しい課題に対し、考える以前に無意識の中で「自分は能力的に適応出来ない」と検討の候補から自分を除外してしまうのです。　
つまり、「戦う前から負けている」状態にあると言えるのです。

そう言われてみると「なるほど、確かにあるかもしれない！」と納得できます。
そういう事ならば、いつも行動せずに終わっている事の説明になるし、その思い込みが成長を阻害する。…と。

脳には「可塑性がある！」。
それが、脳科学の研究から導かれた新しい常識です。

脳は、学習するたびに神経回路が形成され、接続を作り、能力を高めていく。
その意味で「知能には限界がない」事を意味しています。
つまり、脳は、「変われるし、成長する」というのが新しい常識という事です。
れは、「出来る人」と「出来ない人」がいるのでなく、その事実を「知っている人」と「知らない人」が居て、「知ると知らない」で大きく能力の差が生まれてしまう。
という事を示唆しています。

この本の著者は、（米）スタンフォード大学の教育学部教授のジョー・ボアラー氏です。
オンライン大学講座（ＭＯＯＣ）の数学教育カリキュラム政策の第一人者と紹介されています。

著者は数学教育研究者なので、本書の中では数学教育の在り方を通じ、持論が展開されます。
その意味で、数学教育現場で教育の在り方に悩み模索をしている方には、多くの啓示を与えてくれる本です。

その内容としては、現在の教育は「スピードと暗記」によりテストの点数をいかに上げるかを偏重し、最も大切な「深い理解」がなされていない。
その結果、大切な現実の世界で生かされる事が無く、それこそ無駄な授業となってしまっている。　

大切な事は、「物事の本質を深く理解する事に」にある。
評価すべきは、点数評価（ミスの評価）でなく学習理解の評価（ルーブリック評価）であらねばならない。
う論じています。

この本では、この実践の為に必要なノウハウが提示されています。
多面的視野を身に付け、豊かな創造性を育み、コミュニケーションの大切さを実感し育む為に、「多次元アプローチ」を駆使した授業とグループ共同作業授業を推奨しています。

そして、それを可能にする為の心の在り方（六つのマインドセット…下記＊参照）について、たくさんの研究結果と共に論じています。

「脳は可塑性を持っている」。
それを前提にすれば、何時でも、何歳でも成長できる。
人は変われないという「固定された思考」よりも開放される。
そして「知能に限界はないどんな事でも学習できる」と考える「しなやかな思考」に、思考を上書き出来る。
その事により、自らの内にある「心のブレーキ」が外れ、潜在能力が開放される。
　
この本を読んで、成長を促進する大切なマインドセットを身に付け、「心のブレーキ」を外す事で行動力を手に入れる。
そして、「チャレンジ精神旺盛な活力のある自分」に変身する。
そんな「あなた」を見てみたい。

そう思います。